2023年4月15日土曜日

Misskey.ioの何が面白いのか1周回って分からなくなってきた話

 (2023/04/16追記)

さて、以前の記事でも書いたように、ロガーサービスが使えなくなった関係でMisskey.ioにライフログを移行していこうと思ってから、丸2週間が経った。

流石に2週間も覗いていると、どんなウェブサービスでもなんとなくの傾向というのはつかめてくる。.ioもなんとなく傾向が見えてきた…というか、うんざりしてきたので、ここで書き留めておくことにする。

 

前提

Misskeyは地球で生まれた分散マイクロブログSNS(原文ママ)である。分散型SNSの共通規格であるActivityPubに則って開発されているので、Mastodonなど他の分散型SNS・サーバーと互換性があり、相互にフォローが可能であることが特徴だ。

他の分散型SNSプラットフォームが大方そうであるように、Misskeyも数多のサーバーを抱えている。以下、単に「Misskey」と書いたときはMisskeyプラットフォーム全体に適用される話、「Misskey.io」または「.io」と書いたときはMisskey.ioサーバーにだけ適用される話だとご理解されたい。



リアクションシューティング

Misskeyにはリアクションシューティングという機能がある。これはDiscordやSlackにも同様の機能がある*1ので知っている人は知っているだろうが、postを見たユーザーが絵文字を貼り付けられる機能だ。twitterでも話題になった「レターパックで現金送れ」の応酬は、この機能を使って行われている。

この機能の特徴は、FBの「いいね」や、twitterの「お気に入り」ないし「いいね」などの定型文的な反応より、ずっと多くの文脈を持たせた反応が出来るところにある。例えば「おはようございます」というpostには、ほぼ確実に「おはみすきー!」*2などといったリアクションシューティングが行われる。

一見すると、これは従前のSNSよりも繊細な反応が行えて文脈の読み違いによる齟齬を防げるように思えるが、実際にはそうでもない。ユーザーによってデザインされた所謂「カスタム絵文字」はものすごい量が登録されており、現在進行形で増え続けているが、それでも速い時間帯には秒間数十postを数えるMisskey.ioのpostのすべてに反応するには十分ではない。というより、中途半端に繊細なのでかえって読み違いを誘発するのだ。

真意の読めない組み文字による反応は、ざっくりとした「いいね」より、半端に意図が垣間見えるため質が悪い。僕のように猜疑心の強い人間は、ダイレクトな文章を送られると委縮してしまう。実際に僕が一番最初にしたpostについたリアクションをご覧いただきたい。

こんなものを登録して数分の人間に送る*3精神は到底理解出来ない。これが面白いと思ってるのなら尚更だ。無論、僕は最初のpostで何かしら規約違反を犯した記憶はない。規約は3回読み返したので間違いはないはずである。

 

 

ルールの不透明さ

以前の記事でも書いたように、Misskey.ioはNSFWコンテンツ、所謂エロ絵に関して、他のサーバーに比べると投稿規則が緩い。.ioにおけるNSFWコンテンツの投稿規則は、4月14日現在「修正を行うこと」「2次元であること」「画像そのものにNSFWフラグを設定すること」だけである。

その一方で、MisskeyはActivityPubプロトコルを共有するMastodonなどの他SNSとは違い、CW(コンテンツ警告)を設定されたpostに添付された画像は完全に格納され、ぼかされたサムネイルすら表示されない。つまりCWが設定されていると、ローカルタイムライン*4上ではほぼ目立たず、速い流れの中で埋没していくのである。

こういった側面を持っているサービスながら、一部のユーザーはNSFWコンテンツの投稿に際してCWを設定することを強く求めている。

繰り返すが、.io運営が公式に定めている最低限のルールは「NSFWフラグを設定すること」のみであり、「CWを設定すること」ではない。 つまり、これは一部のユーザーが勝手に主張している「界隈のマナー」に過ぎない。*5

こういう動きがある以上、運営はこうしたマナーの暴走に対して何か言っておく必要があると思うのだが、僕が知る限り、この件に関して運営が何かを表明したことはない。(2023/04/16追記:この記事を公開して数時間後に、NSFWコンテンツに対する投稿規則が改定された。センシティブなイラストについては従来通りNSFWフラグの設定のみで可能、センシティブな文言を含むpostについてはCWを設定することが明文化された。サーバーの規則がユーザーの権利を阻害する方向へと改定されなかったのは英断だと思うが、この件が示すように.ioの規則は水物であり、安定とは程遠い。今後声の大きい奴が勝つようなエセ民主主義に陥っていかないとは限らないので、楽観視は禁物である)

それどころか線引きが全く不透明な禁止ワードのマスク機能を実装し、禁止ワードを含むpostは強制的にホームタイムライン限定公開になる仕様になってしまった。こういう状態だからこそマナーは暴走しっぱなしであり、(Mastodonに比べれば格段に機能しているとはいえ)検索機能がやや弱いMisskeyでNSFWコンテンツを含むpostを探すのは次第に困難になりつつある。(2023/04/16追記:11日時点で、原則的に公開範囲を限定して投稿できる「チャンネル」《twitterでは「サークル」に相当》機能を検索する機能が実装されていた。今まではチャンネル検索を外部サービスに頼っていたので、検索性は大きく改善している。この追記を書いている現在、post本文の検索機能を高速化するアップデートが行われているので、検索機能は今後も拡充していくものと思われる)

以前にも書いたが、僕からエロコンテンツを引けば何も残らない。僕は文字通りエロコンテンツに救われたからこそ生きているのだし、僕が出力するものが、どうにかしてあの頃の僕のような存在を救ってくれればいいと思って出力しているのだ。その動機に関しては誰にも文句を言わせるつもりはない。

僕はエロコンテンツを見たいし、エロコンテンツを見てほしいのである。そこには最低限必要なルール以上のものを差し挟んでほしくはない。それを見られることによって救われる誰かは確実にいるはずだからだ。

 

 

セルフリノート

前述のように、Misskey.ioのローカル・ソーシャルタイムラインは「濁流」と称されるほど流れが速い。その一方で、twitterなどのように、1つのpostをリツイート(Misskeyではリノートと呼ばれる)する回数に限度があるわけではない。同じpostを何度でもタイムラインに流すことが可能なのだ。

よって、自分が他のユーザーに見てほしいと思うpostを自分でリノートする行為、所謂セルフリノートを行うことが常態化している。twitterでもセルフリツイートをすることは可能だったが、一般的なMisskey.ioユーザーのそれは比較にならない。日に2度3度、時には1時間に1回セルフリノートを行うユーザーなどもいる。

ローカル・ソーシャルタイムラインだけを見ているのなら、それほど気になるものでもないのだろう。何といっても情報の濁流だからだ。しかしながら、Misskeyにも勿論「フォロー」という概念があって、フォローしているアカウント・コミュニティだけを表示してくれるホームタイムラインというものがある。問題はこちらのタイムラインを見ているユーザーに起こるのだ。

当然ながら、ホームタイムラインにもリノートは表示される。すると何が起こるのかというと、四六時中「もう見たpost」が何度も何度も表示されてくるのである。Mastodonと同じようにMisskeyにも「見たことのあるリノートを省略表示する」という設定オプションがあるが、Misskeyの「見たことある/ない判定」はリアクションシューティングを行ったかどうかと紐付けられているため、相対的に「リアクションシューティングをしたくもないようなどうでもいい情報」「あまり見たくない情報」だけが何度も何度も表示されることになるのである。

セルフリノートを頻繁に行うアカウントをフォローしてしまうと、ホームタイムラインはまず読めたものではなくなる。膨大な数のリノートに押し流され、フォローしているアカウントのpostなどはどこかへ行ってしまう。落ち着いてpostを読みたいからホームタイムラインを見ているはずなのに、ノイズが多くて目的の情報へ辿り着けないのでは本末転倒だ。

言い添えておくと、twitterではかなり初期から普通に実装されている「リツイートを表示しない」機能(Misskeyでは『リノートミュート』と呼ばれる)はつい先日実装されたばかりである。なお、リノートミュートをONにすると、当然のように通常のリノート・セルフリノートの別なくリノートと名の付くものはすべて非表示になる。これでは「自分以外の人の興味関心に触れて見識を広げる」というSNSの魅力を半分スポイルしているようなものだ。

ちなみに書いておくと、Misskeyは開発が始まって今年で4年目らしい。意外と長くてびっくりした人もいるのではないか。僕もびっくりした。それにしちゃ機能が片手落ちすぎるので。*6



風潮

きょうび分散型SNSにいるユーザーの殆どがそうであるように、Misskey.ioのユーザー達は平均してtwitterが嫌いである。又聞きの不正確な情報を無批判に垂れ流し、それが日に何度もリノートされて流れてくる。中にはtwitterユーザーに対するもはやヘイトスピーチの域に達しそうなほどドギツい揶揄も散見され、大量のリアクションを集めている。

その一方で、Misskeyそのものや.ioサーバーに対する批判、上述したような問題点に関する言及は無視される。

僕とてtwitterに関しては10年以上を費やしたという愛着以外には特別な感情を抱いてはいないが、何事にも限度というものはあろう。ここまで読んできた人は大体理解したと思うが、つまるところMisskey.ioはムラ社会なのである。

尤もSNSなんてものは開かれているようでいて実際には閉じたサークルであり、程度の大小こそあれすべて何かしら歪んでいるものだが、その中でも特にMastodonを嚆矢とした種々の分散型SNSはビッグテックへの反乱を旗印として生まれたものである分、反動的というか歪みが多く蓄積されている印象が強い。

僕がMisskeyを使ってみるにあたって.ioサーバーを選んだのは、運営が「分散型SNSではあるが、分散することを強く指向せず、そこに関してはフラットである」と明記していたからだ。

自分で言うのも恥ずかしいが、僕は多趣味である。写真を撮り、ギターを弾いて歌い、曲も書けば絵も描くし、このようにまとまった文章を出力することも好きだ。ミリタリーと変格推理小説、ホラー小説には目がないし、BC級ホラー映画愛憎家を自称している。

これら沢山の趣味嗜好を語るためにいちいちアカウントを分けたり、投稿先を変更したりなどするのは、僕にとっては手間でしかない。エレキギターの話とホラー映画の話くらいなら同時に進めてしまいたいのだ。ここだけの話、実は複数のアカウントを使い分けているのだが、それらも大雑把な括りでしか分けられていない。だからこそ、「何でも箱」として運用できるように.ioサーバーにアカウントを取得したのだ。

だが実際には複数のサーバーにアカウントを分けるユーザーが大半であり、僕のように何でもやることを標榜する人はあまり多くないというのが体感である。それは仮にも分散型SNSである以上、仕方のないことなのかもしれない。

しかしながら、ここでもマナーが暴走していて、端的に言って面倒くさいのである。我々は街中で撮ったくだらない写真ひとつ、そのままではローカルタイムラインに上げられない。コミュニティを使用することが強く推奨されているのだ。

ムラ社会では共同体への批判は勿論、自己言及においてもネガティブな物言いは許されない。僕は10歳から希死念慮のある筋金入りのネクラで性根もひん曲がっているため、口から出るのはほぼ冷笑と自己批判だけなのだが、この偉大なるMisskeyムラではそれは許されないのである。

ムラの住民達はtwitterの堕落はネガティブな物言いを受け入れ続けたために起きたと信じ切っており、ネガティブな物言いを極端に嫌う。潔癖症と言ってもよい。ローカルタイムラインをしばらく眺めてみれば分かる。流れてくるのはキラキラした綺麗事(とtwitterの悪口)ばかりであり、子供でも満足にやれるようなことをしたと報告しては「偉業」*7とリアクションを送りあう、眉間に皴が寄るような甘ったるい馴れ合いがその間隙を埋めている。

先に書いたように僕はネクラかつ性根がひん曲がっているため、綺麗事ばかりを見させられると怒りが蓄積していく。正論で世界が回るかよ、と毒づきたくなるのを抑えるのは正直言って困難である。

更に、住民はとにかく「Misskeyは沢山反応がもらえる温かいコミュニティである」ということを強調したがる。しかしながら、これも単なる彼らの共同幻想にすぎない。.ioサーバーは既に、限られたパイを取り合う市場である。Misskeyの各インスタンスの中では最大のユーザー数を抱えているのだから当然である。誰しもがここを目指し、レッドオーシャンの血の色は更に濃くなっていくのだ。MFM*8やカスタム絵文字を多用して、目を引くだけで可読性の低いpostを連投するユーザーに、拝金主義のtwitterが笑えるとでもいうのだろうか。

そして住民がそのようなプロパガンダを標榜するたびに、Misskeyではまともに反応がもらえない僕や、似た境遇の創作者達はダメージを負っているのだが、彼らはそれに気付くことはない。現実を見ることより甘い夢にすがっていたい連中である。



…と、このように散々な書きようだが、Misskeyはまだまだ不完全なサービスであり、毎日のように大型アップデートが入る。上述の問題が今後アップデートで改善する可能性は十分にあり、また開発者・運営者のフットワークの軽さには素直に頭が下がる思いである。

その一方で、ユーザー側の問題はなかなか改善が難しそうだ。

これを読んでいる人も、しょうもない部活のしょうもない空気感や、しょうもないオタクのしょうもない内輪ノリ、しょうもない仕事をしょうもない理由で片づけなければいけない不条理などを味わったことがあるのではないかと思う。現状のMisskey.ioには、それらがもう少し信仰に寄った形で横たわっていると思ってもらってよい。部活に、オタクサークルに、職場に疑義を呈する人間は必要とされていないのである。

もう少し人が増えて、そのような歪んだ選民意識が薄まればまた違ってくるとは思うが、現状では「楽しむことを強要される」、あるいは「狂人になることを強制される」サーバーであることに間違いはない。生活や社会に疲れ、自然体でいることが一番楽しく、またそれを求めている人間には、少々参入の心理的ハードルが高すぎる。

僕も初めの頃は楽しかった。postにリアクションがつくのも新鮮だったし、UIを自分が使いやすいようにカスタムできるのも魅力的だった。

しかしながら、それも数日のうちに色褪せた。ルールは恣意的に運用され、デマは人口に膾炙し、人々はレッテル張りと排斥に躍起だ。やっていることは何らtwitterと変わりないくせに、twitterを見下すことだけは欠かさない。

そんな中にいて、正気を保つほうが難しい。第一、彼の地には僕が培い保全してきた人間関係というものが何もない。新しいサービスに登録しているのだから当然と言えば当然だが、ゼロからスタートするしんどさと、コミュニティそのもののしんどさがダブルパンチで押し寄せる。

願わくば、twitterのフォロワー達がそっくりそのまま移住してきてくれればいいのだが。そんなことは叶わぬ夢だと分かっているからこそ、僕はこれを書かざるを得なかったのだ。




脚注

*1 Misskey.ioの管理者はDiscordの日本語ローカライズに参加した開発者のうちのひとりらしいので、Misskeyにも同様の機能があると書いたほうがより正確かもしれない

*2 まったく信じがたいが、これは本当にありふれた挨拶として膾炙している

*3 アカウントが作成されてから初めて投稿されたpostをリノートするbotが存在しており、大抵の場合そのbotに捕捉されてからリアクションシューティングが行われるため、このpostを行ったのが登録したばかりのアカウントであることは認識出来ていたはずである

*4 そのサーバーに所属するすべてのアカウントのpostが(特に公開範囲を指定されていない限り)すべて流れる仕様のタイムライン、通称「濁流」。分散型SNSではホームタイムラインよりもローカルタイムラインを見る使い方が主流と言えば主流

*5 .design、.artなどのサーバーはNSFWフラグの設定に加えて、CWの併用がルールとなっている

*6 尤も開発は個人規模であるので、あまり開発速度を求めるのは酷な話ではある

*7 さらに言えば、「偉業」のバリエーション絵文字だけで5つくらいある

*8 Markup language For Misskeyの略。Misskeyで使用できる専用のマークアップ言語で、簡単に言ってしまえば文字が飛んだり跳ねたり斜体になったり逆転したりボケたりして、可読性を著しく下げてくるステキ機能。当然だがこれは皮肉である